なぜ今まで持ってなかったんだろう?18%グレーカードを入手2018年07月23日 06時27分

18%グレーカードとはなんぞや? という方に簡単に解説すると、カメラに内蔵されている露出計は、18%グレーのものが適正な明るさに映るように設定されています。
それがなぜ18%グレーなのかは、こちらに詳しい解説があるのでので割愛するとして、18%グレーのものが適切な明るさで撮れれば、真っ黒の被写体から真っ白の被写体までを、バランスの良い明るさで写してくれます。
もちろん、各メーカーごとに基準は多少違いますし、いわゆる明るめに撮るハイキー、逆に暗めに撮るローキーといったように、個人の好みもあるので、何が適正かとは明確には言えないものの、1つの基準として、18%グレーカードが用いられています。

このカードを被写体の近くに置いて、その明るさを反射光露出計なりカメラの露出計なりで測ることで、その他の色も適正露出で写るという仕組みです。
80年代後半から、Nikonのマルチパターン測光に代表される、多分割測光が主流となり、カメラのTTL露出計の精度はぐんと上がり、後は経験則に基づき露出補正を加えることで、適正露出を得られる確率はぐんと上がりました。

とはいえ、きちんとグレーカードで露出を決める、というのは基本ですし、特に古いカメラで撮る場合、内蔵露出計がなかったり、あっても精度がいまいちだったりするので、グレーカード+単体露出計があると便利です。

Yamaroの機材でいうと、BRONICA S2は露出計がなく、普段撮影の際は、SEKONICの古い単体露出計を持ち歩きます。
この露出計は単純な反射光でのみの計測となるため、実際の撮影現場では、被写体に向けても、果たしてどの辺りを測っているかが分かりづらく、大体の感で、露出計の示す値を基に調整していました。
今回、18%グレーカードを導入することで、撮影の際の露出決定に役立つかと思います。
ン百円で買えてしまうNikonの18%標準反射板18Rと、持ち運びに便利な折りたたみ式の小型のSEKONICの標準反射板JL10を買ってみました。

NikonとSEKONICの18%標準反射板

何故2つ買ったかというと、SEKONICは小型で持ち運びしやすいカードタイプだから、NikonはA3サイズと大きめで、室内で使うのに良いから、あと安いからです。
それに、グレーカードも物によって微妙に色が異なりますし、物は試しということで。

SEKONICの標準反射板はコンパクトで折り畳める

露出計でおなじみのSEKONICの標準反射板は、グレーカードと言われるように、畳めばちょっと大きめのカードサイズ。
こんな感じで完全には開かないようです。耐久性は…あまりなさそう。消耗品ですね。

Nikonの標準反射板は大きめ

一方Nikonの標準反射板は、A3サイズのダンボールです。表面はざらつきが大きく、まあ値段なりですね。
外装には、制造商:株式会社尼康とありますが、"尼康"とはニコンの中国語表記です。つまり、このまま中国にも輸出しているんでしょうね。ちなみにMade in Japanです。

NikonとSEKONICの18%標準反射板 色が違います

2つのグレーカードを並べると、色が違うのがわかります。
特に、Nikonのほうは、表面のざらつきが大きいので、光源の角度で色が変わるようで、これがこの標準反射板はホワイトバランス取得に使えない、としている理由の1つかもしれません。上のNikonのグレーカード単体の写真と比較すると、この写真を撮った光源(暖色系蛍光灯)の色味が強く出ています。
SEKONICのほうは、表面がつるつるなのか、反射角による色の変化は少ないですね。

◆露出調整
実際にカメラ内臓の露出計で、そのままマルチパターン測光の露出補正なしで撮ったものと、グレーカードにスポット測光して露出を決定して撮影したものとで比較してみましょう。
光源は、暖色系の蛍光灯です。露出以外はオートのままです。

▼Nikon D850 マルチパターン測光(露出補正なし) f5.6 1/3s
D850のマルチパターン測光(露出補正なし)

▼Nikon D850 Nikon標準反射板+スポット測光  f5.6 1/2s
D850 Nikon標準反射板+スポット測光

▼Nikon D850 SEKONIC標準反射板+スポット測光 f5.6 1/1.6s
D850 SEKONIC標準反射板+スポット測光

如何でしょう?
被写体は黒いレンズですが、黄色のNikonのマウスパッドに露出を引っ張られて、一番上のマルチパターン測光では若干暗く写っています。
グレーカードで露出を決めた写真は、わずか1/3EVから2/3EVですが、もう少し明るく写ることで、レンズの黒と背景の黄色のバランスが良くなっていると思います。
同じグレーカードでも、この条件ではNikonとSEKONICので1/3EVの差が出ていますが、これはNikonの標準反射板は、光源との角度で明るさが変わる傾向が大きいためです。

なお、フィルム写真と違い、デジタルの場合は、今はNikonのアクティブDライティングに代表されるように、階調補正を備えたカメラが多く、自動コントラストなどもあるため、露出だけが明るさを決める要素にならないことに注意が必要です。


◆ホワイトバランス調整
グレーカードのもう1つの使い方は、ホワイトバランスの調整です。

ホワイトバランスも、現在はカメラの性能が向上し、オートホワイトバランス(AWB)でも好ましい結果が得られることが多くなりました。
それでも、ミックス光源だったり独特の色の照明下では、AWBがコケることもありますし、そもそも照明を純白と考えて補正するか、電球色なら赤みを残すのか、やはり個人の好みや意図が反映されます。

グレーカードでホワイトバランスを取ることで、基本的に真っ白い被写体が真っ白に撮れるようになります。
これは白い紙などでも代用できますが、厳密にはグレーカードも白い紙も、ものによって微妙な色の違いがあるため、撮影結果を見つつ微調整することになります。

18%グレーと言っても、メーカーによって微妙に色合いが異なるため、Nikonはあえてホワイバランス取得には使えない、としているのでしょう。
上に挙げた写真でも分かるように、NikonとSEKONICですら、同じ光源で色味が違います。
厳密には、ホワイトバランス取得に適した専用品を使用することをおすすめします。例えばX-riteのColor Checker White Balanceですね。

ただ、検索してみると、Nikonのグレーカードでもきちんとホワイトバランスが取れるという意見もありますし、逆に写真界ではスタンダードな銀一のグレーカードは、ややマゼンタに転ぶといった意見もあり、物は試しです。
ですから、一般的なグレーカードは露出決定のみに使用でき、ホワイトバランス取得には適さないのでしょう。

では、カメラのAWBで撮ったものと、グレーカードでホワイトバランスをマニュアル取得して撮ったものとで、色合いを比較してみましょう。
光源は、同じく暖色系の蛍光灯です。
なお、D850のAWBは、AUTO0(白を優先する)、AUTO1(標準)、AUTO2(電球色を残す)がありますが、今回は一般的なAWBの傾向として、AUTO0の白優先としてみました。


▼オートホワイトバランス(AUTO1) ※上の写真の使い回し(笑
D850のマルチパターン測光(露出補正なし)

▼Nikon標準反射板によるホワイトバランスプリセット
Nikon標準反射板によるホワイトバランスプリセット

▼SEKONIC標準反射板によるホワイトバランスプリセット
SEKONIC標準反射板によるホワイトバランスプリセット

如何でしょう?

AUTO0の写真は使い回しで、やや露出不足ですが、色味としては無難です。背景に彩度の高い黄色があるので、昔のデジカメだとAWBは転びやすいのですが、流石にD850のような新しい機種は、おかしな転び方はないですね。ただ、白優先だと、補正しすぎて若干青っぽい色味にもなっています。

一方、Nikonのグレーカードは緑被りしているのがわかります。マウスパッドの白の部分は、最も白っぽく見えるのですが、光源は暖色系蛍光灯ゆえ、やりすぎると蛍光灯特有の緑の波長が強調されるのかもしれません。
いずれにしろ、この条件では、Nikonの標準反射板は好ましい結果は得られませんでした。HPにあるように、ホワイトバランスプリセットには使えないと見て良いでしょう。

SEKONICのグレーカードは、今回一番好ましい結果が得られました。
光源の暖色系も若干残しつつ、緑被りもなく、最も自然な色合いに感じます。
このグレーカードなら、ホワイトバランス取得にも使えそうですね。


やはり同じ18%グレーといえど、微妙に色合いが異なるようですね。
グレーカード本来の用途は露出決定なので、フィルム写真ではどうなるか、またBRONICAで撮影する際に試してみようと思います。

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