ニコンミュージアム企画展「ニコン双眼鏡100年の歴史」を見てきた12018年07月07日 07時20分

2018年7月3日から9月29日まで、品川のニコンミュージアムにて「ニコン双眼鏡100年の歴史」と題した展示が始まりましたので、ちょうど平日の休み、かつ天気も雨で飛行機も撮りに行けないので、行ってみることにしました。

品川インターシティ

雨ですが、こんな日こそゆっくり博物館見学ですね。

ニコンミュージアム

着きました。

ニコン双眼鏡100年の歴史

入り口には、各年代のファッションと、その年代のニコン双眼鏡。
おしゃれな女性は、おしゃれな双眼鏡をお持ちなのです。


それでは展示を見ていきましょう。


1910年代から現代までの製品を展示

1910年代から現代までの双眼鏡が展示されています。
もちろん、非常に貴重な歴史的価値の高いものも多く展示されています。

藤井レンズ製造所

自分も知りませんでしたが、ニコンの前身の日本光学工業創立以前に、藤井レンズ製造所というところで、光学製品が製造されていたとのこと。創設者は海軍技師の藤井龍蔵氏。その藤井レンズ製造所が、日本光学工業創立にあたり、1社に統合、なるほど、日本光学と海軍との結びつきは、そういうことなのですね。
陸のトーコー(東京光学・トプコン)、海のニッコー(日本光学・ニコン)と言われる所以です。

当然全部は紹介できませんので、関東圏の方は足をお運びいただき、行けない方にいくつかピックアップしてご紹介します。
私は双眼鏡に関しては全くの無知なので、詳しい解説はできませんが…。


藤井レンズ製造所 VICTOR 8X20

これが藤井レンズ製造所の、国産初でもある市販双眼鏡第1号、「VICTOR 8X20」。100年以上も前、すでに双眼鏡のイメージ通りのデザインで製品化されていたのです。個人所蔵、よくこれを維持されていました。もしかしたら、まだどこかの古い蔵に眠っているかもしれません。

日本光学工業 MIKRON 6X15(IF)

1917年に創立した日本光学工業、その歴史の中で外せないのがこのMIKRON 6X15(IF)でしょう。
非常にコンパクトな双眼鏡として、1921年に発売されました。驚くべきことに、途中販売終了したものの、復活して改良版が現代でも販売されているのです
100年近く前の製品が、改良されて今も販売されているとは、驚愕に値します。

日本光学工業 対空望遠鏡 10X60

1938年の対空望遠鏡 10X60、天体観測用かな。この時代には既に日本の光学技術は相当なもので、光学先進国のドイツにも負けない製品が作られるようになっていたそうで、こうした双眼鏡、望遠鏡と言った光学製品の品質の良さが、逆に電探、つまりレーダーの開発を遅らせたとも言われています。

1930年代までの貴重な双眼鏡たち

1930年代までの貴重な双眼鏡たち。写真機より前に、こうした双眼鏡が製造販売されていました。
双眼鏡は、当然ながら軍事分野とも結びついていきます。また、船乗りには現代でも双眼鏡は欠かせませんね。

そして、目玉展示の1つ、世界最大級の25センチ双眼望遠鏡が、なんと50年ぶりに一般公開となりました。
冒頭の全体写真の中央に写っていた超大型の双眼望遠鏡です。

日本光学工業 25センチ双眼望遠鏡

日本光学工業 25センチ双眼望遠鏡

日本光学工業 25センチ双眼望遠鏡

見てくださいこのスケールの大きさ! これが双眼鏡なのです。
接眼レンズの交換で、最大250倍もの倍率を誇ります。陸上監視用として条件が良ければ70km先の集団行動、20m先の個人行動が確認できる、とされています。恐るべき双眼鏡です。
これが単眼望遠鏡ではなく、双眼望遠鏡というところに注目してください。単眼と違い、双眼鏡の場合、左右の精度が少しでもずれると、立体的に像を見ることが出来ません。それがこれだけの高倍率ともなると、ほんの僅かな狂いが影響してきます。
”光学ガラスの製造からレンズ研磨、組立調整まで想像を超える困難を要した”とあるのも頷けます。
まさに、世界的遺産であり、このような双眼鏡が、1939年に製造されていたのです。

以上、1930年代までの紹介となりましたが、もうここだけでもお腹いっぱいですね。
ですが、次回、更に歴史的価値の極めて高い双眼鏡が登場します。今日はここまで。

コメント

_ ベアベア ― 2023年08月02日 17時11分59秒

興味深い記事を掲載して頂きありがとうございます。藤井レンズ製作所の双眼鏡の現物が残っていると初めて知りました。鮮明な画像を見せて頂き感激です。

『1938年の対空望遠鏡 10X60、天体観測用かな』
ですが、この双眼鏡は、日本光学が陸軍の注文で制作納入した対空双眼鏡
「98式6糎対空望遠鏡」
です。敵の飛行機を見張るために、70度の仰角(かなり大きな仰角です)がつけてあります。

同様に、日本光学が海軍の注文で制作納入した12センチ20倍の対空双眼鏡
「12糎高角双眼望遠鏡」
はミッドウェー海戦を描いた映画(「永遠のゼロ」など)に必ず登場します。

戦前の日本光学は、陸軍・海軍に納入する様々な光学機器の専門メーカーで、民間向けの光学機器は基本的に作っていませんでした。戦前の貧しい日本では、日本光学の光学機器は「高級過ぎた」と言えるかもしれません。

なお「12糎高角双眼望遠鏡」と同じ光学設計の12センチ20倍大型双眼鏡は、ごく最近までニコンの現役製品でした。かなり大きなものですが、アマチュアの天文ファンで持っている人が結構いて、私も天文少年時代に覗かせてもらった経験があります。

現在は廃版ですが
「ニコン 大型双眼望遠鏡 20×120 III <架台付き>」
は、ヨドバシドットコムに今でも掲載されています。最終価格は税込で50万円弱で、意外に安くて驚きました。
(現在、「ニコン12センチ双眼鏡」と同レベルの天体望遠鏡は150万円はします)

_ Yamaro ― 2023年08月22日 05時36分03秒

>ベアベア様

詳しい解説ありがとうございます

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