ニコンミュージアムにてウルトラマイクロニッコール展を楽しんだ2018年05月04日 06時27分

肉フェスの後訪れたのが、品川のニコンミュージアム。2回目の訪問です。

ニコンミュージアム企画展 ウルトラマイクロニッコール

今回は、「世界最高解像度レンズの系譜 ウルトラマイクロニッコール」と題した、写真用ではない、産業用ニッコールレンズの企画展が18年6月30日まで催されているため、これを見てきました。

ウルトラマイクロニッコールです。ウルトラなんですよ!
Nikonは、等倍までのレンズは他社のようにマクロレンズではなく、"マイクロ"レンズと称しています。
そのマイクロニッコールレンズの超高解像度産業用レンズが、このウルトラマイクロニッコールレンズです。

我が国の半導体技術に貢献したウルトラマイクロニッコールレンズをここまで集めた展示は、世界に類を見ない展示となっています。
一般にはNikonはカメラメーカーというイメージしかありませんが、Nikonの前身、日本光学時代から、Leicaなどと並ぶ世界屈指の光学メーカーとして、産業や学術、防衛分野にも貢献してきました。


●半導体露光装置「NSR-S306C」用投影レンズ
半導体露光装置「NSR-S306C」用投影レンズ

半導体露光装置「NSR-S306C」用投影レンズ

入ってすぐに展示されている、半導体露光装置「NSR-S306C」用投影レンズ。
これは半導体を製造する上で、シリコンウェハに回路パターンを焼き付けるためのレンズです。
仕組みは、NikonのHPに書かれています。ここにも
レンズの解像度が高いほど(もちろんウェハを動かす精度も重要ですが)、細かいパターンを描くことが可能です。
こういった装置が、日本の、そして世界の半導体製造に貢献しています。
近年では海外メーカーが躍進し、Nikonの半導体露光装置はシェアを落としてしまいました。この辺の事情は、こちらの記事がわかりやすいと思います。残念な話ですが、何でも自社でやってしまうという日本の技術風潮が、現代の事情に合わなくなっていると言えるかもしれません。

それはともかく、貴重なウルトラマイクロニッコールレンズは、産業用という用途から、装置に組み込まれて使用されるため、装置の減価償却完了、廃棄となるため、残っているものはなかなか少ないようです。
今回の展示は、社内の試作品も含めた展示となり、ここでしか見ることが出来ない貴重なものとなっていました。

詳しい解説は、知識がないので出来ません。詳しくは、この分野では日本、いや世界的にも有名なRED BOOK NIKKORの記事をご覧ください(丸投げ)。

ウルトラマイクロニッコールレンズの展示

ウルトラマイクロニッコールレンズの展示

貴重な展示です。写真用レンズとは一味違うレンズの世界を堪能できます。
全ては紹介できませんが、いくつかピックアップします。

●Ultra-Micro-Nikkor 58mm f/1.8
Ultra-Micro-Nikkor 58mm f/1.8

詳細不明としか書かれていない、試作品のレンズ。
面白いのが、58mmという焦点距離で、この焦点距離はFマウント最初の標準レンズNikkor-S Auto 5.8cm f/1.4や、Noct Nikkor 58mm f/1.2、現行のAF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gといった、Nikonの名レンズでもおなじみの焦点距離で、この1本のみが58mm。
レンズ構成やスペックが不明なので何とも言えませんが、60mmといキリの良い数字ではなく58mmというところに、何となくロマンを感じてしまいます。

●Ultra-Micro-NIKKOR 28mm f/1.8
Ultra-Micro-NIKKOR 28mm f/1.8

こちらも興味深い。何と、先ごろ生産完了したNikon 1 J5にマウントされています。
もちろん、公式にウルトラマイクロニッコールレンズをNikon 1マウントに装着できるアダプタはありませんが、ウルトラマイクロニッコールレンズの28mmについては、ライカでおなじみL39スクリューマウントであることから、Nikon 1マウント↔L39マウント変換アダプタが存在するため、こうした物を使えば(無限遠はでないと思われますが)、装着は可能であることを示しています。
いや興味深い。遊び心をくすぐりますが、ウルトラマイクロニッコールレンズはそう簡単には手に入らないですからね。

●マイクロドットの展示
マイクロドットの展示

ウルトラマイクロニッコールレンズの超高解像度を示す展示。これが1961年の技術です。
写真の露出の関係で分かりづらいですが、ディスプレイの黒丸の中に、小説の1ページが描かれています、ウルトラマイクロニッコールレンズを使って縮小して描き、それをウルトラマイクロニッコールレンズで拡大して写しています。

ドットの大きさ、わかりますか?

このマイクロドットに小説の1ページが

こんな"点"に文字が描かれているんです。
お隣には、このマイクロドットに転写した時に使用された装置も展示してありました。

世界最高解像度レンズを評価するための撮影装置

東京大学理学部(当時)の小穴教授が、超高解像度レンズ評価のために使用した撮影装置で、この展示で装着されているウルトラマイクロニッコールレンズの29.5mm F1.2は、何と1,260本/mmという超高解像度を達成しています。
これはものすごい高解像度で、展示されていたその他のウルトラマイクロニッコールレンズが300~400本/mmなので、極めて解像度が高いレンズなのです。

●Ultra-Micro-NIKKOR 250mm f/1.0
Ultra-Micro-NIKKOR 250mm f/1.0

間違いではありません。250mmでf/1.0を誇る大口径レンズです。
繰り返します。f/1.0です。バケモノレンズです。
写真用のレンズでは、当然のことながら、こんなスペックのレンズは存在しません。もし仮に作ったとしたら、もっと巨大なレンズになってしまいます。
200mmならf/2、300mmならf/2.8が写真用レンズでは大口径レンズとして扱われています。
もちろん、このウルトラマイクロニッコールレンズは、写真撮影用ではないため、フォーカス範囲も限定されるでしょう。
それでも、カメラに装着して撮影してみたいものです。実際には大判フォーマットにマウントするのでしょうか。


●Ultra-Micro-NIKKOR 300mm f/1.4
Ultra-Micro-NIKKOR 300mm f/1.4

もはや笑うしか無いスペックです。
300mmレンズでf/1.4です。f/2.8じゃないんです。極めて特殊な用途だからこそ実現できるスペックです。
夢ですよこんなレンズ。


●露光装置用縮小投影レンズ
露光装置用縮小投影レンズ

こちらは半導体露光装置に組み込まれているレンズで、レンズ単体で購入するものではないようです。したがってレンズ名称もありません。

●Ultra-Micro-NIKKOR 50mm f/1.8
Ultra-Micro-NIKKOR 50mm f/1.8

こちらは600本/mmの解像度です。先程の1,260本/mm程ではないにしろ、極めて解像度の高いレンズであることに変わりありません。
マイクロニッコールレンズは、どれも高解像度ですから、だんだん感覚が麻痺してしまいますね。


如何でしょうか? ごく一部のみの紹介となりましたが、日本や世界の工業を支えたレンズたちが、ここに集結しています。
2018年6月30日までの展示となっています。
ニコンミュージアムへ、是非足を運んでみては如何でしょうか?

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