EL-NIKKOR 80mm F5.6を入手2018年04月15日 07時35分

引き延ばし機用のレンズ、表題のEL-NIKKOR 80mm F5.6を入手した。(末尾にNがつかない旧タイプ)
※EL-NIKKORはイーエル・ニッコール、ではなくエル・ニッコールと読みます。

EL-NIKKOR 80mm F5.6

引き伸ばし機とは、現像済みのフィルムを印画紙に焼き付けるため、フィルムに光を当てて、その像を引き伸ばし機に取付けたレンズで拡大させて、その下に置いた印画紙に露光し焼き付けるための機材で、今回はそのレンズの部分を初めて入手。

何故そんなレンズを入手したからと言われると、最近読んだニッコール千夜一夜物語「第六十四夜 EL-NIKKOR 80mm F5.6N」のページが妙に気に入ってしまったからだ。

EL-NIKKOR 80mm F5.6

そして、産業用・工業用ニッコールレンズ研究家の秋山満夫氏のHP、RED BOOK NIKKORも、以前から知ってはいたけど、最近記事をリニューアルされたので、再び読みふけってしまったのも、EL-NIKKORに興味を持った一因となった。
もちろん、秋山氏のような、入手が難しいコレクダーズアイテムのようなレンズには手を出しづらいけど、近年のミラーレス一眼の登場で、以前は価値のないレンズでジャンク扱いされていたレンズも、最近はマウントアダプタなどで遊べることが分かってから、レンズ遊びの環境が整いつつあることも確か。
なるほど、カメラで言う、ボディは消耗品(特にデジタルになってからはそんな印象)、レンズは資産、というのも分からなくもないかなと思った次第。

幸いというか、まだカメラ用のレンズと違い、引き伸ばし機用レンズ、そのままではカメラに取り付けが難しいレンズは、まだそこまで価格高騰しておらず、また一部を除き市場在庫はそこそこ豊富なため、入手できるうちに入手したいのです。
ちなみに、EL-NIKKORは、引き伸ばし機のみならず、産業用レンズとして用いられていることもあり、現在も栃木ニコンでは、低倍率産業用レンズ「Nikon Rayfact」シリーズが、EL-NIKKORの後継として販売されています

さて、EL-NIKKOR、マウントはL39マウント、通称Lマウントと称されるスクリューマウントで、バルナックライカに代表される伝統のもので、引き伸ばし機のレンズはほとんどがこのL39マウントです。
もちろん、そのままではNikonのFマントに装着できませんし、そもそも撮影用レンズとして作られたものではないため、このレンズ単体ではフォーカシングができません。フォーカスリング機構がないため、フォーカスリングもなく、絞りリングのみです。

ニッコール千夜一夜物語の中では、

"EL-NIKKORに限らず、一般に引き伸しレンズはライカスクリューマウント(Lマウント)になっているので、Lマウント-FマウントのアダプターでFマウントのボディに取り付けることができる。ただし、EL-NIKKORにはピント合わせのための機構がついていないので、別途繰出し機構を用意する必要がある。焦点距離80mmで繰出し量が大きいので、近距離を優先して使うならベローズを準備するのが便利である。"

とあるものの、では実際にどのような物が必要かは記載されていません。ベローズはわかりますが、既にNikonでは純正のベローズは販売終了です。中華製ベローズはAmazonなどでありますが、繰り出し機構の精度はそれなりだとか。
Nikonのサイトでは、さすがに他社のコンバーターなどの種類を具体的には記載できない大人の事情があるのでしょう。

"汎用性の高いライカL39スクリューマウントなので、 BORGのヘリコイドを介してニコンカメラに装着した。”

と言う記述と共に、実際にEL-NIKKOR 63mmをF2に装着した写真が掲載されています。

BORGはおもちゃでおなじみTOMYTECの望遠鏡ブランドで、望遠鏡に限らず、望遠鏡をカメラに取り付けるアダプタなど各種光学アクセサリを販売しています。
HPを調べると、レンズを繰り出しフォーカシングするための、M42ヘリコイドがラインアップされていて、その中にEL-NIKKORとヘリコイド+マウントアダプタ(とそれらををつなぐ変換アダプタ)、M42をM39(Lマウント)に変換するアダプタの情報(http://www.tomytec.co.jp/borg/uploads/pdf/chartPDF/m42_elnikkor.pdf)が記載されています。

今回80mmのEL-NIKKORを選んだ理由は、適合表を見ると分かるように、Fマウントのカメラに装着した状態で無限遠が出せて、なおかつ近接まで撮影できる汎用性の高さが理由です。
下手に安価で最も流通しているEL-NIKKORの50mmを選択すると、無限遠が出ないため、マクロ撮影に限定されてしまうからです。
また、80mmであれば、中望遠レンズとしても、マクロレンズとしても使いやすい焦点距離でもあります。
ちなみに、引き伸ばし機用のレンズとしては、80mmレンズは、中判フィルムの引き延ばしによく使われていた焦点距離だそうです。
今回は、手始めにEL-NIKKOR 80mm F5.6のみの入手でしたが、いずれはBORGのアダプタ類も揃えていきたいと思います。

それにしてもEL-NIKKORのNがつかない旧型、金属の質感といいい、絞りのクリック感といい、コンパクトさといい、なかなか良いです。
絞りはF45まで設定できますが、実際に引き伸ばし機でもそこまで絞ることは無いと思われます。

EL-NIKKOR 80mm F5.6の絞り(F45)