Nikon初のフルサイズミラーレス一眼、Z 7, Z 6とレンズ・マウントアダプタ発表2018年08月24日 06時23分

多くのカメラ系サイトでやっているネタですが、Nikonの101周年目に当たるこの年の、大きな転換期となる製品発表なので、触れておきましょう。
23日午後1時からのライブ配信は、職場の昼休みに冒頭の25分ほど見ることはできましたが、ちょっと噛み気味のプレゼン(笑)とともに、かっこいい画像を見ることができました。
最近のNikonはなんというか、ああいう見せ方がうまいですね。


◆同一ボディ形状で画素数と連写コマ数違いのZ 7, Z 6

名称は事前のリーク通りZでした。ゼットではなく、ズィーと読むようです。
そしてZ7ではなく、"Z 7"とZの後に半角スペースが入るそうです。めんどくさいです(笑

Nikon Z 7もZ 6もボディは共通

今回2機種同時に発表されたボディの形状や大きさは、Z 7,Z 6共に同じで、ボタン配列も同じです。
つまり、ボディの型式エンブレムを見ないと、両者の区別はできません。
これは、同一ボディとするとこで、コストダウンを図ったためでしょう。
メディアはXQDとCFexpressのダブル、はたまたXQDとSDのダブルとされていましたが、蓋を開けてみると、XQD1スロットのみ(将来同一形状のCFexpresに対応予定)。これではプロやハイアマチュアのニーズに対応できないでしょう。

Z 7, Z 6共にXQD1スロット

ボディ内蔵手ぶれ補正は5軸5.0段分と、α7IIIと並んでいます。最初だからこんなものでしょう。これからの時代、ミラーレスはIBIS(ボディ内蔵手ぶれ補正)は必須です。
余談ですが、センサーシフト式のVRは、レンズ一体型のCOOLPIXで過去採用例があり、これはCOOLPIXの一部がOEM製品であることに由来します。なので、レンズ交換式では初、としています。

5段分の補正が可能なセンサーシフト式VR

4K動画は残念ながら60pではなく30pのままですが、新たにHDMIからの10bit N-Log出力対応となり、とりあえず動画も軽視しない姿勢は好感が持てますね。4Kでもフォーカスピーキング、電子手ぶれ補正、アクティブDライティングが使えるようになったのは、D850にはない美点です。

画像処理エンジンは、最新のEXPEED6となりましたが、これがもたらす画質は果たしてどんなものでしょう。
ピクチャーコントロールに、ミドルレンジシャープなる項目が追加されました。
加えて、従来のNikonにはなかった大きく画像を加工するクリエイティブピクチャーコントロールも搭載されています。
これらは、Capture NX-Dでいずれ従来機種のRAW現像でも使用できると良いですね。
回折補正が初めて入ったのも朗報で、他社では既に実現しているので、やっとかという思いです。

電子シャッターは当然採用されていますが、Z6もZ7も、SONYのα9のようなローリーングシャッター歪みに強いセンサ、というわけではなさそうです。
AFは、いずれの機種も他社にある瞳認識はなく、残念。GX7MK2にですらあるんですけどね。開発が間に合っていないのか?
発売後のファームウェアアップで機能追加していけば良いと思いますが、Nikonはあまりそういうファームアップはありませんからね。

USBは3.0か3.17日は不明ですが、Type Cも搭載され、モバイルバッテリからのカメラ本体で充電も可能で、ここはライバルに並んだかなと思います。
バッテリは形状はEN-EL15系のEN-EL15bとなっていて、このバッテリ装着時のみ、カメラ本体での充電が可能なようです。撮影自体は従来のEN-EL15/15aも可能です。

また地味に嬉しいのが、パソコンへWiFiで直接画像転送可能なことで、従来の高価な無線ユニット無しで転送できるのはありがたいです。
SnapBridgeも進化していて、ボディの電源OFFでもスマホからカメラ画像の確認が可能で、よりスマホやパソコンと親和性が高くなっているようです。

電子シャッターは搭載されていますが、メカシャッターの1/8000秒より速い電子シャッター速度は搭載していないのは残念。
シンクロ速度も1/200秒と、こちらも上位一眼レフよりやや劣る残念な仕様です。


▼正面
Nikon Z 7の正面

ラバーのシボはNikonの一眼レフそのものですし、グリップも一眼レフと似た形状で、握りやすそうです。
正面のコマンドダイヤルは、ギザギザが一眼レフより細かいものになっています。
マウント左側の2つのボタンも、これまでのNikon一眼レフと似たものですし、反対側のレンズ着脱ボタンも同じなので、Nikon一眼レフユーザーならすんなり使えそうです。
一方、一眼レフにはあるAF切り替えスイッチは存在せず、これはもうレンズ側のスイッチに統一させるということでしょう。
AFモード切替をどうするのかは不明です。液晶画面上でしょうか?
D750と同様、10ピンターミナルやシンクロ接点はありません。
最近は、スピードライトはシンクロ接点の有線接続より無線で飛ばすのが主流ですし、10ピンターミナルも、80年代後半に遡るシリアル通信の古い規格なので、Nikonミラーレスで今後採用するのかどうかが気になります。恐らく、今後はBluetoothなど無線がメインとなり、旧来のI/Oは廃止されていくのではないでしょうか?


▼背面
背面のボタン配列はZ 7もZ 6も同じ

Nikon一眼レフよりボディが小さくなったため、液晶画面左側にのボタンはなくなり、一部が右側に配されています。これによる操作性はどんなものでしょう? こればかりは使ってみないと何ともですが。ジョグレバーやAF-ONボタンは健在です。
液晶はチルト式のタッチパネルで、これは予想通りです。D850のタッチパネルも使いやすいので、それをさらにブラッシュアップしてくれると良いですが。
EVFは、いわゆる角窓で、D850やD5のような丸窓ではありません。ここは伝統に従って、より上位機は丸窓になるのでしょうか?
369万ドットの有機ELファインダ、どんなものか早く見てみたいです。
フレーミング時に絵がカクつかず、スムーズに表示できることを望みます。ミラーレスになった以上、ここが重要になる部分です。


▼上面
肩液晶(有機EL?)搭載

シャッターの同軸上にある電源スイッチは、Nikon伝統の使いやすいもので、イルミネーター点灯切り替えは省かれています。
もっとも、サブ液晶or有機EL(私は肩液晶と呼んでいますが)も常時点灯になっていると思われ、もはやイルミネーター点灯をあえてスイッチで明示する必要もないのでしょう。
ところで、サブ液晶(有機EL?)が付いているのは嬉しいですね。これは何故かSONYのαシリーズにはないので、やや小ぶりとはいえ、あるとないとでは、あったほうが三脚に据えて撮影する際は、何かと便利です。
コマンドダイヤルは、後ろ側は他メーカーの一部の機種のように、ダイヤルの上面まで露出しているタイプです。ちょっと回しにくいのではないか、という懸念がありますが、NikonでもかつてF90やF90Xなんかは、このようなコマンドダイヤルだったので、多分問題ないのでしょう
モードダイヤルは、3つのユーザーカスタム設定を含むものが左肩にあり、これはD750と似た感じですが、モードダイヤルのフォントは、かつてのNikon 1 V3を彷彿とさせます。

あと、シャッタースピードダイヤルだの露出補正ダイヤルだの、余計なものがないのもいいです。あれは個人的にマニュアル一眼レフの操作系と思っているので、コマンドダイヤルが前後にあるカメラに必要ないですね。
アクセサリシューのスピードライトの接点は、これまでのNikon一眼レフと同じで、一眼レフ用のスピードライトも共用できるのではないかと思います。小型化のためにあえて専用シューとしたNikon1は失敗でしたね。


◆D850と同画素ながら、イマイチ押出に欠ける、Nikon Z7 http://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_7/

Nikon Z 7

9月下旬発売予定のZ 7。
4575万画素という高画素はD850と同様に、像面位相差AFを搭載、それでいて画質はD850よりさらに向上しているとのこと。
一方、連写コマ数は秒9コマと、ライバルとなるα7RIIIの秒10コマに届かず、D850+MB-D18+EN-EL18と同じ。
しかも、秒9コマは12bit RAWのAE固定(AFは追従)、14bit RAWのAE固定(AFは追従)だと秒8コマ、AE追従では12bit RAWで秒5.5コマまで低下、さらに14bit RAWで秒5コマと、残念なスペックです。
D850では、当然AF追従で14bitRAWでも秒9コマを達成するため、ミラーレスのZ7がこれでは、魅力半減です。
像面位相差AFは493点と、α7RIIIの399点を上回りますが、大きな差ではないでしょう。画素の90%をカバーするため、実用上ほぼ画面全域でAFが使用可能です。
ローライトAFで-4EVでもAF可能とする半面、シームレスに-3EVに対応するα7RIIIと違い、ローライトAFという切り替えをしないと-1EVまで、というのも釈然としません。
これでは、ライバルたるα7RIIIに太刀打ちは難しいでしょう。あちらはAF追従の14bitで秒10コマ(ただし撮影条件による)、手ぶれ補正も5.5段分とわずかに勝っていますし。
EXPEED6の処理速度が排熱の問題で使い切れていないのか、いろいろ謎ですが、どうも上記制約は処理速度に関わる気がしますが、どうなのでしょう?
ファインダ撮影時の撮影コマ数も、Z7は330枚、α7RIIIは530枚、バッテリグリップの別売りもなし。

連続撮影コマ数も、D850に遥か及びません。RAW L 12bitロスレス圧縮の連続撮影コマ数は、わずか23コマ! D850は170コマ、α7RIIIで76コマです。バッファが少ないのでしょうが、D850との差が大きすぎます。

これでD850と対して変わらない値段なのですから、動画メインで考えない限りは、ちょっと無いですね。D810からの置き換えも厳しい…。



◆実質D750の後継機となるNikon Z6 http://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_6/

Nikon Z 6

一方、同じ2400万画素となるZ 6は、実質的にD750の後継機と言えるのではないでしょうか。こちらは11月下旬とちょっと遅れて発売。
D850と同画素ながら劣る部分も多いZ 7と違い、Z 6の方が売れ筋になるのは間違いないでしょう。
スペック的には、後出しなのでライバルとなるSONY α7IIIを上回ってしかるべきでしょうが、秒12コマと手堅くまとめてきました。
ただ、こちらもAE固定の(AF追従)12bit RAWのみで、14bit RAWでは秒9コマに低下します。AF/AE追従では秒5.5コマ。何故だ? やはりいろいろな処理が追いついてない印象です。
まあαの方も、秒10コマはいろいろ制約があるようですが、それでもAFもAEも追従します。

AFポイント数は、α9と同等の693点の像面位相差AFを備えるSONY α7IIIに対し、273点と控えめ。もちろん、多ければよいというものでもないですが、AFセンサのカバー率は90%とZ7と同じなので、測距点の密度が違うということでしょう。その実力が如何程のものか注目です。

ファインダ撮影時の撮影コマ数は、Z6は310枚、α7IIIは610枚、倍近い差。

連続撮影コマ数は、RAW L 12bitロスレス圧縮の連続撮影コマ数は、35コマで、4年前のD750の25コマよりは多いですが、α7RIIIで89コマです。やはりバッファが少ないのでしょうね。そしてZ7と同じバッファ容量なのでしょう。

機能的には、Z7とイメージセンサが異なり、それに伴う連写速度の違い程度で、後はかなりの部分が共通のようです。


◆FT1に近い仕様?のマウントアダプタFTZ http://www.nikon-image.com/products/accessory/body/ftz/

Nikon FTZ

まだレンズラインナップが少ないZマウント、当然長きにわたるレンズ資産があるFマウントレンズを活かすべく、マウントアダプタは必須。
仕様を見ると、やはりAFモータ内蔵レンズ以外は、AFが使用不可能。SONYですらボディ駆動AマウントレンズのAFが使えるマウントアダプタを用意しているだけに、少々残念。
しかも、MFレンズやモータ非内蔵AFレンズでのフォーカスエイドは使用不可。画像拡大して確認しろということですね。
とは言え、AI以降のレンズは対応と、基本的にDfを除くフルサイズ一眼レフとほぼ同じでしょうか?
VRレンズの場合は、ボディとレンズ側両方で手ぶれ補正できるようです。
特に書かれていないところを見ると、Nikon 1用のFT1と違い、AFに特に制約はなさそうですね。実際どの程度使い物になるかが楽しみです。
アダプタは所詮アダプタ、レンズが増えない限りは、まだまだ一眼レフの出番はありますね。


Nikon最初のフルサイズミラーレスとなるZ 7, Z 6ですが、発表されてみるとスペックも今一歩、ライバルたるSONYのα7IIIやα7RIIIを超えるスペックもでもなく、SONYへの移行組がNikonへ戻るケースは少ないでしょうし、SONYから入った人がNikonに移行する可能性も少なそうです。
ただこれは多分Nikonの中の人もわかっているはず、これよりより連写に特化したα9対抗機種も、いずれは出るのでしょう。その頃には、望遠レンズもZマウント用が発売されるとよいのですが、ロードマップではまず広角~標準系が優先のようです。
望遠レンズや、ライバルにはないシフトレンズのラインアップも急務ではないかと。

次回は、レンズについて触れてみます。
個人的に、消耗品でモデルサイクルの短いボディと比較して、長きに渡って使われるレンズ、今回はむしろレンズに力を入れている印象です。