ニコンミュージアム企画展「コレクション展」を見てきた その32019年06月08日 07時22分


ニコンミュージアム企画展「コレクション展」

さあここからは、ニコンミュージアムのセンターに展示される「コレクション展」のコレクションを見ていきましょう。


●三式偏流計(1944)
三式偏流計

航空機の偏流角を測定するためのもの、だそうです。
三式とあるのは、恐らく設計が始まったのが皇紀2603年(西暦1943年)であること、戦時中の航空機用の装備品であったであろうことから、旧日本軍向けのの正式品としての名称と思われます。
1944年に完成し、旧日本軍に納品されたものと思われますが、自社でもきちんと保管しているのが日本光学ことニコンの素晴らしいところ。
こういうものは、一般企業では廃棄されるケースがほとんどだからです。ましてや戦時中のものですからね。

三式偏流計の接眼部

接眼部には測定方法が記載されています。
面白いのは、高度が現代も航空機で一般に用いられているft(フィート)ではなく、米(メートル)なのですね。
右側には高度の調整ダイヤルらしきものがあります。
接眼部はオールドニコンらしい、真鍮に半つや消しの黒塗装であること、後のNikon SシリーズやF2辺りまでの黒ですね。

レンズ先端

ちゃんと蓋があります。使用時以外は蓋をしてレンズを守るのでしょうね。


●Fisheye-Nikkor 16.5mm F8(1941)
Fisheye-Nikkor 16.5mm F8

Fisheye-Nikkor 16.5mm F8の蓋

日本光学初の魚眼レンズです。海軍からの要望で開発、とあるように、海軍と結びつきが強かった日本光学、というのが端的にわかる事例ですね。
焦点距離は16.5mmですから、135判カメラ向けだったのでしょうか?
マウント部を見ると、マウントではなく大判カメラの箱に取り付けるネジ穴が確認できましたが、そのようなカメラで使用されたのかが気になります。

●測風経緯儀(1930)
測風経緯儀

気球を飛ばして、その動きから風向風速を測定する、というなんともアナログな経緯儀。測量機のような形状です。
1930年のものですから、まだ気象観測は、このようなアナログな手段が用いられていたのでしょうね。

測風経緯儀

特許番号が記載されていますね。色がカーキの塗装で、塗装が剥がれて茶色い部分が見えていますが、茶色もまだ塗装なのかな?


●3メートル望遠写真機(1935)
3メートル望遠写真機

さあ大物です。3メートル望遠写真機、とあるように、焦点距離は3m=3000mmです。
焦点距離からすると、超望遠レンズです。
説明書きによると、上部には反射鏡が、下部にはプリズムが配されており、屈折光学系で光路長を稼いでいます。潜望鏡型とすることで横方向への長さを抑えたというわけですね。


下の黒い部分にキャビネサイズの乾板を取り付けて撮影したそうです。
ですから、135判=デジタルで言うフルサイズより大きな乾板ですから、焦点距離3000mmといっても、フルサイズ換算すると600~700mmくらい? やはり超望遠レンズに違いありませんね。

3メートル望遠写真機のレンズ先端

これだけ大きいレンズですが、f値はいくつなのでしょうね?
実際に撮った写真も見てみたいものです。


●1.5メートル測距儀(1936)
1.5メートル測距儀

1.5メートル測距儀

ザ・測距儀!という日本光学が得意とした分野。
1936年の測距儀が現存、特に太平洋戦争以前の工業製品がなかなか残っていない我が国ですから、まさに博物館クラスのものです。ってニコンミュージアムですから博物館ですね(笑

1.5メートル測距儀の解説

測距儀の仕組みはシンプルです。距離R=tanθx1.5mで求められます。
これは距離計(レンジファインダー)カメラの仕組みそのものです。
現代でも測距儀は用いられていて、護衛艦に乗ると、測距儀で相手方の船や岸壁、陸までの距離を測っている様子がブリッジ横で確認できます。

護衛艦「きりしま」の測距儀
↑写真は2015年海上自衛隊観艦式における護衛艦「きりしま」より、きりしまの測距儀。今も昔も大きな違いはない。

1.5メートル測距儀の接眼部

接眼部。ちゃんと鼻が当たらないような窪みがついています。
下には伝声管の穴も空いています。流石に遮光ラバーは劣化しています。

1.5メートル測距儀の伸光器レバー

フォントが何だか象形文字っぽい。

こうした貴重な品が、ガラス越しではなく見られるのはすごいことですよ。
まだ続きます。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
スパム対策のため、管理人のHN(Yamaro)をひらがな3文字で入力してください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yamaro.asablo.jp/blog/2019/06/08/9082726/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。