Capture NX-Dがどうダメなのか書き連ねる2014年08月02日 23時04分

Capture NX-D
D810以降、これから発売されるNikonのRAW対応のデジタルカメラは、今後純正ソフトではCapture NX-DでのみRAW現像可能となるわけですが、執筆時点でのVer1.0.1(64bit)はかなり未完成な部分が多く、現像ソフトとしては、前任のCapture NX2に遠く及ばないのが実情。

なぜ、今まで有料のCapture NX2から、今回無料のCapture NX-Dに変わったか?
過去何度か書いたように、今までCapture NX2のソフト開発を請け負っていたNik Softwareが、2012年にGoogleに買収され、恐らくライセンスの関係でこれ以上Capture NX2の改良が出来なくなったためでしょう。
ちなみに、新しいCapture NX-Dは、市川ソフトのSILKYPIXベースと言われており、画面もそっくりですが、本家SILKYPIXほどの機能もありません。

Capture NX-D、何がダメなのか、今度どう改善されるべきなのか、Capture NX2と比較をしながら、検証してみることにしました。


●Capture NX2で編集した結果の一部は、Capture NX-Dへ反映されない

NX2で編集したファイルは、NX-Dで読み込みこそ可能ですが、ポイントコントロールや自動レタッチブラシなどの結果は反映されません。
ベータ版の時点では、今度対応予定としていましたが、現時点ではまだ未対応です。
ポイントコントロールは、対応は難しいかもしれません。現時点では、Capture NX2があるならそれでいいですが、今後OSが新しくなれば、Capture NX2のインストールもできなくなるでしょうから、これは過去の編集データの切り捨てになりかねません。
Nikを買収したGoogleと交渉して、なんとか過去の編集結果を表示だけでもできるようにすべきでしょう。


●RAWファイル直接更新からサイドカーファイル方式へ

これまで、NX2までは、現像時の設定をNEF/NRWファイルに上書きしていました。ただし、上書きしても、撮影時のパラメータが消えるわけではありません。編集履歴はすべて、NEF/NRWファイルに保存されます。いつでも撮影時の設定に戻すことが可能。
NX-Dでは、元のNEF/NRWファイルには変更を加えず、別途フォルダを生成し、調整情報を別ファイルとして保存するサイドカーファイル方式に変更されました。
一見、元ファイルをいじらず、非破壊で編集できて良いようにに感じますが、前述のとおり、NX2でも撮影時のパラメータは残りますし、何より1つのファイルで完結せず、個別の設定ファイルを読みに行く必要があるサイドカー方式は、ファイル管理が煩雑になります。
何より問題なのが、本文執筆時点では、Capture NX-Dで編集しても、View NX2ではその結果が反映されない(View NX2はサイドカーファイルを読みこまない)のです。
純正ビュアーたるView NX2が、これまた純正ソフトのCapture NX-Dのサイドカーファイルを読み込めないのは、大きな問題でしょう。、早急に読み込めるよう対応すべきです。
もっとも、これはサードパティのAdobe Potoshop Lightroomで編集しても同じことですが(Lrもサイドカーファイル方式)、純正ソフトならそこは何とかすべきでしょう。

ちなみに、D810のRAWファイルであっても、View NX2では簡易RAW現像を行った後、直接NEFファイルに結果が保存されます。
わざわざ別ファイルに格納する意味、純正ソフトであるのでしょうか?



●描画速度がきわめて遅い

もともとCapture NX2も、最新PCであっても処理が重いソフトとして有名でしたが、Capture NX-Dはさらに上を行く遅さ(汗
それが割と新しめの第4世代Core i7マシンを使っていても、モザイク表示から結果が反映されるまで、相当待つことに。さらに、表示の大きさによっては、結果が反映される部分とされない部分が四角い升でいくつも表示され、いつまでも結果が反映されない部分もあります。これは明らかにソフトのバグですね。
処理が重すぎるのかと、CPUメーターを見ても、数%しか処理していなかったりします。


●拡大表示のスライダーがない

Ctrltと+キーでもできますが、せめてスライダーで簡単に拡大縮小表示できてほしい。
RAW現像では、等倍にして結果を参照することが多々あるので。


●Capture NX2から一部機能が省かれている

NX2にあった以下の項目は、NX-DのVer1.0.1(64bit)/1.0.0(32bit)ではなくなっています。

カラーバランス
カラーブースター
色域変換
ぼかし(ガウス)
ハイパス
自動レタッチブラシ
投げ縄ツール
選択ブラシ
コントロールポイント

カラーバランスが調整できないとは言語道断。色を扱うソフトとして、カラーバランス調整は基本中の基本のはずです。
その代り、色相などの編集が可能になっていますが、直感的に編集できるカラーバランスは、別途必要でしょう。
同様に、カラーブースターも、そう手間がかからず載せられるはず。

色域変換も、正確な色管理すべきRAW現像ソフトにおいて、搭載されないのは理解できません。
せめてJPG変換する際に、sRGBに変換する機能は必要でしょう。View NX2にもついているのに。
この点が、多くのブログ(プロも含めて)指摘されていないのはなぜだろう? もしかして見落としている?

ぼかし(ガウス)、ハイパスは、どちらかというとレタッチソフトの領域なので、これは個人的になくてもよし。

自動レタッチブラシは、センサの埃が気になるレンズ交換式デジカメでは、今は必需品です。
サードパティの現像ソフトでも搭載されているので、こちらも早急に欲しいところ。
投げ縄ツール、選択ブラシも、部分的な調整には欠かせませんので、搭載は必須でしょう。

コントロールポイントは、前述のとおり、Nik Softwareが買収されたことによるライセンスの問題で、搭載はないと明言されているので、ここはあきらめるしかないですね。
どうしても欲しければ、Nikを買収したGoogleより販売されていて、Photoshopのプラグインとして使用可能ですし、Capture NX2を持っているなら、NX-DでRAW現像後、16bit TIFFファイルに変換して、NX2でコントロールポイントを使うことは可能です。



個人的には、ライセンスなどいろいろな大人に事情があるとはいえ、NX2よりも機能を落とした未完成な現像ソフトを、正式版として発表したことに憤りを感じます。View NX2以上Capture NX2未満でしかありません。
今後機能を増やしていく、ではなく、最低限、正式版公開の時点で、Upoint以外の機能は搭載してしかるべきです。
Nikon史上最高位画質と自ら評するD810が、この未完成なNX-DでしかRAW現像できないのは、残念を通り越して呆れ返ってしまいます。よほどJPG撮って出しに自信があるのでしょう(爆


▼ソフトウェアが苦手分野なのが、Nikonの欠点

RAW現像ソフトにしても、有料版ではNikon Captureに始まり、Capture NXを通じて、2008年にCapture NX2が登場。以降、OSの64bitネイティブ対応やノイズ処理などの改良を重ねながら今日まで来ました。しかし、ソフトは外部委託であることから、委託先の事情が変わると、今回のような結果になるわけで、自社で開発できていれば、こんな改悪はなかったはずです。
Capture NX-Dも、SILKYPIXの市川ソフトが携わっているといわれていますが、市川ソフトの将来の展望によっては、Capture NX-Dも将来どうなるかわかりません。それこそ、NX-Dのサイドカーファイルが読み込めないケースも想定されます。

Nikonというメーカー、こうしますああしますと言いながら、時間がたつと前言撤回したりと、よく言えば革新的で身軽、悪く言えば節操のない会社でもあります。半世紀以上前のFマウントを誇示する保守的なメーカーと思ったら、実は大間違いなのです。どちらかというと、ライバルCanonのほうが保守的なんですよね。

かつてCOOLPIX P6000の扱うRAWデータが、これまでのNEFではなくNRW形式になった際、当初NikonはCapture NX2では対応予定はなく、View NX2での簡易現像のみ、としていました。がっかりしたユーザーは多かったですし、私もP6000は買うのをやめてしまいました。何のためのRAWなのかと。
その後、Capture NX2がNRW形式にも対応したのはご存じのとおり。対応予定は当初なかったのに、です。
結局、NRW形式にする必要はなかったのでは?と思います。

ビュアーソフトにしても、その昔Nikon Viewというソフトから、一時期PictureProjectというソフトに変わりましたが、フォルダを見る形式ではなく画像を登録する形式に変更されました。
たびたび画像登録の為スキャンをしなければならず(フォルダに画像を入れても、画像管理で登録されないと表示もされない)、使いづらくて仕方なく、使うのを早々に辞めたら、そう時間もたたずにNikon Viewと同様、フォルダ内のファイルを直接見る方式のView NXが発表。
結局PicturePrjectなるソフトは何だったのだろうとなる始末。

とにかくどう転ぶかわからないのがNikonのソフト。良い方向に転ぶなら大歓迎ですが。


▲さらなる改良に期待

いろいろ文句を書いてきたとはいえ、私の考えとしては、そのメーカーの色の出し方、解釈、カメラ固有の機能など、純正ソフトだからできることはたくさんあるので、文句は大いに言いつつ、Capture NX-Dの進化を期待したいと思います。
また、これまで有料だからとCapture NX2やサードパティのRAW現像ソフトを使わなかったユーザーにとっては、今回の無料化は歓迎すべきことですから、Capture NX-Dが何もかも悪いということにはならないはずです。

Adobe Photoshop Lightroomに移行を検討しつつ、以前体験版を入れた際は、余計な画像管理処理に苛立ち、やめてしまった経験から、やっぱり文句を言いつつ、Capture NX-Dを使うんだろうなと思います。
文句を言わないと、いつまでも改善しないので、今後は積極的に意見しようと思います。

コメント

_ 藤原 ― 2014年09月18日 19時02分28秒

全く動感です。 せっかく D810 を買ったのに、100%表示に30秒もかかっていたのではたまったものではありません。
いろいろ調べまくって、 DxO と Lightroom と Capture One を比較し、 Capture One が最良だと判断して乗り換えました。
version 8 が出たところです。

かなりいいソフトです。

_ やまろ@管理人 ― 2014年09月19日 21時25分08秒

先日のバーションアップも、D750の対応のみで、がっかりでした。
私も他に移行したい気持ちはあるものの、なかなか重い腰を上げられずにいます。私もLightroomにどうも馴染めなかったので、Capture Oneも要検討ですね。

_ スナフキン ― 2015年05月12日 00時30分04秒

NIKONというメーカーは昔からこんなメーカーだったのでしょうか?
今回の現像ソフトの件もそうですが、あまりにもユーザーをバカにしているように思えます。
Canonも同じだという人も居ますが、撮影意欲を掻き立てるCMをあれだけ流しておきながら、撮影しても現像は出来ませんよ~ポラロイドよろしくJpegのみで撮影してください、と言っているような仕打ちは過去からの資産を抱えているユーザーには理解できません。
償却出来るプロならともかくアマには使い倒すしか無いので、過去のデータandハードが使えないのは致命的です。
ちなみにハードの部分はII型の高価なレンズにIII型のテレコンが使いないなどたった一つ前の型のサポートを放棄するメーカーはもう二度と買う気も知人に勧める気も失せます。

_ やまろ@管理人 ― 2015年05月14日 23時54分51秒

>スナフキン様

Nikonはハードは強くとも、ソフトウェア開発は弱いですね。自社のみで完結できるCanonと違い、どうしても一部は外部委託せざるを得ない。デジタルじ時代において、Nikonの弱い面が出ていますね。

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